看護師の夜勤の仕事の規則
[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more..]
看護師の夜勤に関する労働条件などは、労働基準法で定められています。労働基準法の原則は、「1日の労働時間は8時間以内」というものです。これだと、2交代制の夜勤は16時間勤務になりますので、労働基準法に違反していることになりますよね。
でも、労働基準法の中で「変形労働時間制」が定められていて、労働時間が週40時間以内であれば、1日8時間を超えてもかまわないと規定されているため、2交代制の夜勤の勤務時間が16時間以上になっても、労働基準法に違反していることにはなりません。
また、休憩時間についてですが、「労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩」が義務付けられています。8時間以上の勤務は1時間の休憩を取れば法律上はOKですので、労働基準法では2交代制の夜勤でも、1時間の休憩を取れば違反ではないということになります。
ただ、日本看護協会は「16時間夜勤等の長時間勤務の場合、2〜3時間の休憩時間の付与が望まれる。」との見解を示しています。
2交代制の夜勤の場合、夜勤中に2時間程度の仮眠時間がある病院が多いと思いますが、この仮眠時間は、休憩時間ではなく労働中とみなされますので、急変などの緊急時は仮眠中の時間であろうと、すぐに仕事に戻らなくてはいけません。
夜勤専従として働いている場合、労働基準法で夜勤専従に関する取り決めはありませんし、診療報酬の入院基本算定用件も夜勤専従者の月夜勤時間数の上限は平成24年の改定で撤廃されていますので、夜勤専従者は月に何回でも夜勤に入ることは可能になっています。
ただ、夜勤専従者は基本的に日勤に入ることは出来ず、日勤者の急病などのやむを得ない緊急時のみ日勤に入ることが出来ますが、頻繁にそんな事態が起こることは想定できないため、その回数は月1回であると厚生労働省は見解を示しています。
(厚生労働省保険局医療課事務連絡 疑義解釈通知 平成19.4.20)
夜勤の仕事の今後
看護師の夜勤の労働条件については、上記のように労働基準法などで定められていますが、実際には守られていない部分も多く、夜勤をする看護師は過酷な労働条件で働いているという現実があります。
日本看護協会常任理事の小川忍氏は、夜勤・交代制勤務には3つの危険があると述べています。
夜勤をするだけでこのようなリスクを背負うことになるんですね。このような状態を改善するため、日本看護協会は「夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」をまとめ、夜勤・交代制勤務の「勤務編成の基準」の11項目を作りました。
- 基準1 勤務間隔=勤務と勤務の間隔は11時間以上あける
- 基準2 勤務の拘束時間=勤務拘束時間は13時間以内とする
- 基準3 夜勤回数=夜勤回数は、3交代制勤務は月8回以内を基本とし、それ以外の交代制勤務は労働時間などに応じた回数とする。
- 基準4 夜勤の連続回数 夜勤の連続回数は、2連続(2回)までとする。
- 基準5 連続勤務日数=連続勤務日数は5日以内とする。
- 基準6 休憩時間=休憩時間は、夜勤の途中で1時間以上、日勤時は労働時間の長さと労働負荷に応じた時間数を確保する。
- 基準7 夜勤時の仮眠=夜勤の途中で連続した仮眠時間を設定する。
- 基準8 夜勤後の休息=2回連続夜勤後にはおおむね48時間以上を確保する。1回の夜勤後についてもおおむね24時間以上を確保することが望ましい。
- 基準9 週末の連続休日 少なくとも1ヶ月に1回は土曜・日曜ともに前後に夜勤のない休日をつくる。
- 基準10 交代の方向=交代の方向は正循環の交代周期とする
- 基準11 早出の始業時刻=夜勤・交代制勤務者の早出の始業時刻は7時より前を避ける。
(引用:公益社団法人日本看護協会 看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン)
先ほどの日本看護協会常任理事の小川忍氏は、「1つでも、2つでも、できることから進めてほしい」と説明しています。
そして、実際にこのガイドラインの基準を守る病院は増えてきています。日本看護協会の「2014年看護職の夜勤・交代制勤務ガイドラインの普及に関する実態調査報告書」によると、2014年1月の調査と2014年11月の調査結果を比べると、11項目すべてで11月の調査のほうがガイドラインの基準を実施している病院の割合が多く、ガイドラインを守る病院が増加しているのです。
このような流れから、看護師の夜勤の労働環境は少しずつですが改善されていくことが予想されます。
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