療養型病院の看護師の給料と給料アップの秘訣
[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more..]
療養型病院の給料
療養型病院は、急性期の治療が終わって慢性期に移行し、病状が安定している患者さんが多いので、急性期のように職場の雰囲気がバタバタしていたり、忙しくて殺気立っている、と言うことはなく、穏やかでゆったりとしていることが特徴です。
また、急性期病院と比べると残業時間が少なく、家庭や育児と看護師の仕事を両立させやすいため、既婚者や育児中の看護師に人気の転職先となっています。
でも、転職する時に気になるのは給料です。いくら療養型病院は既婚者や育児中の看護師にとって働きやすい職場だとしても、あまりにも給料が安かったら転職する気は起きませんよね。
療養型病院の給料について見ていきましょう。
療養型病院の看護師の給料はどのくらい貰えるのか
療養型病院の看護師の給料は、基本的に急性期病院の看護師の給料と変わりません。
急性期だから高い、療養型病院だから安いということはないのです。急性期だから何らかの手当てがつくようなことはありません。
看護師の給料は地域によって差がありますが、夜勤をやっている看護師さんは、経験5年で月収28万円前後、経験10年で月収30万円前後となります。
年収に直すと、経験5年で400〜420万円、経験10年で430〜450万円が目安になると思います。
療養型病院の給料の特徴
療養型病院の看護師の給料をご紹介しましたが、「経験5年で400〜420万円、経験10年で430〜450万円は少ないのでは?急性期病院なら、もっともらえるはず!」と思う看護師さんもいると思います。
厚生労働省の平成27年賃金構造基本統計調査によると、看護師の平均年収は478万円ですから、それを考えると、療養型病院の給料は、平均よりもやや低めです。
急性期病院の中には、経験5年の看護師の年収は500万円を超えるところもあります。
ただ、これは「療養型病院だから給料が安い」というわけではないのです。急性期病院と比べて療養型病院の看護師の給料が安いのは、病院の規模が違うからです。
急性期病院は大学病院や総合病院など病床数500以上の規模の大きなところが多いですが、療養型病院は病床数100床以下の小さめの個人病院が多いのです。
急性期病院は最新医療機器が必要で、巨額の資金がないとやっていけないのですが、療養型病院は最新医療機器をそろえる必要がないので、個人病院でもやっていけるのです。
勤続10年の看護師の給料を病床数別に比べてみましょう。
病床数 |
税込給与総額 |
99床以下 | 30万8,960円 |
100〜199床 | 31万2,730円 |
200〜299床 | 31万6,728円 |
300〜399床 | 32万8,213円 |
400〜499床 | 33万1,976円 |
500床以上 | 34万4,004円 |
見事に病床数と給料額が比例しているのが分かると思います。
病床数が少ない病院は、ボーナスの支給額も低めであることが多いので、療養型病院の給料は急性期病院よりも安くなってしまうのです。
療養型病院の看護師の給料アップの秘訣=大きな療養型病院を選ぶ
療養型病院の看護師の給料は急性期病院よりも低めですが、どうせ働くなら少しでも給料が高いところで働きたいですよね。
療養型病院の看護師が給料をアップさせる秘訣の1つ目は、少しでも規模の大きな療養型病院を選ぶことです。
先ほども触れましたが、療養型病院は小さめの病院が多いのですが、看護師の給料は病院の規模に比例しています。
そのため、療養型病院に転職するなら、できるだけ大きな療養型病院を探しましょう。そうすれば、給料は高くなりますし、各種手当も充実していて、ボーナスも多めになります。
大きめの療養型病院なら、急性期病院から転職しても「給料が下がった」とガッカリすることはないでしょう。
療養型病院の看護師の給料アップの秘訣=キャリアアップをする
療養型病院の看護師が給料アップするための秘訣の2つ目は、キャリアアップをすることです。これは、療養型病院で働きながら給料アップする秘訣ですね。
療養型病院で役立つ看護師のキャリアアップ方法を7つご紹介します。
慢性疾患専門看護師
療養型病院で役立つ資格の1つ目は、慢性疾患専門看護師です。
慢性疾患専門看護師は、日本看護協会が認定している資格で、慢性疾患看護のスペシャリストであり、慢性期看護を行う看護師の頂点に立つ資格と言えるでしょう。
慢性疾患専門看護師は慢性疾患を持っている患者さんに対して、慢性疾患の管理や健康増進、療養支援に関する水準の高い看護を行う看護師のことです。
慢性疾患専門看護師になるには、看護師経験が5年以上(うち3年以上が慢性疾患看護の実務経験)あって、看護系大学院修士課程で日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定単位(26単位または38単位)を取得し、認定審査に合格する必要があります。
老人看護専門看護師
老人看護専門看護師は、日本看護協会が認定する専門看護師の専門看護分野の1つです。
高齢者が入院する医療施設や介護施設で、認知症や嚥下障害などの複雑な健康問題を持つ高齢者のQOLを向上させるための看護を提供する看護師のことです。
老人看護専門看護師も、慢性疾患専門看護師と同様に、看護師経験が5年以上(うち3年が老人看護の実務経験)があって、看護系大学院の修士課程で所定の単位(26単位または38単位)を取得して、認定審査に合格する必要があります。
摂食・嚥下障害看護認定看護師
摂食・嚥下障害看護認定看護師は、日本看護協会が認定している資格です。
摂食・嚥下機能の評価や誤嚥性肺炎や窒息、栄養低下、脱水の予防を行ったり、質の高い摂食・嚥下訓練を行うことができる看護師のことです。
療養型病院には、嚥下に問題があって誤嚥性肺炎を起こしてしまう患者さんが多いので、摂食・嚥下障害看護認定看護師の資格を取ると、療養型病院で専門性を発揮しながら働くことができるでしょう。
摂食・嚥下障害看護認定看護師になるには、看護師経験が5年以上(うち3年が摂食・嚥下障害看護に関係する実務経験)あって、認定看護師教育機関で660時間(+15時間)の研修を受ける必要があります。
その後、認定審査に合格すると、晴れて摂食・嚥下障害看護認定看護師の資格を取得することができます。
皮膚・排泄ケア認定看護師
皮膚・排泄ケア認定看護師も日本看護協会が認定している資格の1つで、褥瘡ケアやストーマケアの専門家と言える看護師のことです。
この皮膚・排泄ケア認定看護師は急性期、慢性期問わず、幅広く活躍できる資格ですが、療養型病院では、褥瘡を持っている患者さんやストーマの患者さん、オムツに排泄する患者さんが多いので、皮膚・排泄ケア認定看護師は、とても重宝される資格です。
皮膚・排泄ケア認定看護師になるためには、看護師経験が5年以上(うち3年が皮膚・排泄ケアの実務経験)あって、認定看護師教育機関で675時間の研修を受け、認定審査に合格する必要があります。
日本口腔ケア学会認定資格
日本口腔ケア学会認定資格は、口腔ケアの知識や技術の普及、質の向上を通じて国民の福祉のために貢献することを目的とした資格で、5級から1級まであります。
5級は一般人向けの資格になりますので、看護師は4級からスタートになります。
申請資格 |
試験 |
|
4級 |
・医療系の有資格者 |
筆記試験 |
3級 |
・日本口腔ケア学会の会員歴3年以上 |
書類審査と筆記試験 |
2級 |
・日本口腔ケア学会の会員歴5年以上
・日本口腔ケア学会での発表2回以上、論文2編以上を有する |
書類審査、筆記試験、口頭試問 |
1級 |
・日本口腔ケア学会の会員歴10年以上 |
書類審査、口頭試問 |
寝たきりの患者さんや嚥下障害がある患者さんは、すぐに誤嚥性肺炎を起こして、命を落とすことがありますので、療養型病院の看護師は日々の口腔ケアに力を入れて、誤嚥性肺炎を予防する必要があります。
口腔ケア学会認定資格は1級までたどり着くのは遠い道のりになりますが、まずは4級の試験からチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士は、リハビリ計画書に沿って摂食嚥下訓練を実施できること、その経過や結果を報告できること、リスク回避に関して必要な知識や技術を持っていることを認められた資格です。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士になるためには、次の3つの条件をすべて満たす必要があります。
1 | 日本摂食嚥下リハビリテーション学会会員歴が受験年の7月31日において、2年以上であること |
2 | 摂食嚥下に関わる臨床又は研究歴が、受験年の7月31日において、通算3年以上であること |
3 | 日本摂食嚥下リハビリテーション学会のインターネット学習プログラム(eラーニング)の全課程の受講を修了していること |
この3つの受験資格を満たして、毎年12月の第一日曜日に行われる筆記試験(マークシート方式)に合格すると、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士に認定されます。
この日本摂食嚥下障害リハビリテーション学会認定士は、5年ごとの更新が必要です。
参考:一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
日本褥瘡学会認定師
日本褥瘡学会認定師は、褥瘡の予防や褥瘡処置を実施するための適切な知識や技術を持っていると認められた資格です。
療養型病院は寝たきりの人や、自分ではなかなか自由に動けずADLが低い患者さんが多いので、褥瘡がある人が少なくありません。
転院前に急性期病院で褥瘡を作ってしまう人もいますし、在宅で療養中に褥瘡を作って、療養型病院に入院してくる人もいます。もちろん、療養型病院に入院中に褥瘡を作ってしまう患者さんもいます。
そのため、褥瘡予防や褥瘡処置の専門的な知識・技術を持っている看護師さんは、療養型病院ではとても重宝されるのです。
日本褥瘡学会認定師になるためには、以下の条件を満たす必要があります。
1 | 看護師免許取得後、4年以上が経過している |
2 | 4年以上、日本褥瘡学会の会員である |
3 | 4年以上、褥瘡の予防、医療に従事している |
4 | 褥瘡発症の危険因子を有する患者さんの予防計画を記載した予防記録を5症例と褥瘡がある患者さんの治療過程を記載した医療記録5症例がある |
5 | 日本褥瘡学会地方会主催の教育セミナー受講証明書を有する |
この5つの条件を満たして、申請し、条件を満たしていると認定された場合は褥瘡学会認定師の資格を取得することができます。
参考:日本褥瘡学会
療養型病院で役立つ資格は「慢性疾患専門看護師」、「老人看護専門看護師」、「摂食・嚥下障害看護認定看護師」、「皮膚・排泄ケア認定看護師」、「日本口腔ケア学会認定資格」、「日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士」、「日本褥瘡学会認定師」があります。
看護師が療養型病院で役立つ資格取得した後の注意点
療養型病院の看護師が給料アップのためにキャリアアップしたら、自動的に給料が上がるというわけではありません。
専門看護師や認定看護師の資格を取得すれば、月に数千円から1万円程度の資格手当がつくこともありますが、それ以外の資格だと、自動的には給料が上がらないのです。
キャリアアップした後は、まずは師長に資格を取得したことをアピールしましょう。そして、それと同時に資格を取得した分野でリーダーシップを取って働くようにしてください。
そうすると、その働きぶりを見て、次の昇給で優遇されるようになったり、「主任にならない?」と師長から声をかけられて、管理職への道が開けてくるはずです。
昇給で優遇されれば基本給が上がりますし、管理職になれば管理職手当がつきますので、給料がアップします。
ただ、資格を取得しても、今の職場では何の評価もしてもらえない、給料が上がる気配が全くないという場合は、転職を考えると良いでしょう。
キャリアアップしたことを評価して、基本給に反映してくれる療養型病院で働けば、今よりも給料がアップするはずです。
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介護療養病床は廃止されることが決定しており、それに伴い介護療養病床の新設もありません。そのような流れの中で、療養型病院の求人は減少傾向にあるといえます。
数少ない療養型病院の求人の中で、お給料が良く、自分の希望に合った転職先を見つける秘訣は、看護師の転職支援サービスを利用することです。
転職先として人気があるのに、求人が少ないということは、求人募集が出ると一気に応募が集まり埋まってしまうことになります。
転職支援サイトは、非公開の求人も多く取り扱っているので、その中で自分の希望に合った療養型病院を紹介してくれます。
お給料はどのくらいか、医療療養病床か介護療養病床か、どのような看護をしているのか、など自分の希望をしっかりと伝えることが転職成功への鍵です。
また転職支援サイトでは、専門のコンサルタントが転職の相談に乗ってくれたり、アドバイスをくれたりするので、転職を成功させやすくなります。
療養型病院へ転職を考えていて、さらにお給料アップを狙っている人は、一度転職支援サイトを利用してみてはいかがですか?
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