NICUの特徴・仕事・要求されるスキル、職場の選び方と給料アップ法
[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more..]
NICU(新生児集中治療室)の特徴
NICUは新生児特定集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit)の略で、早産で生まれてきた子や低出生体重児、何らかの先天性疾患を持って生まれてきた子はこのNICUで集中的に管理・治療をする必要があります。
たとえば1,000g未満で生まれてきたり、染色体異常や先天性心疾患があるとNICUに入って状態が安定するまで集中治療を受けなければいけません。
NICUは常時医師が勤務していることや当直医は他病棟と兼務ではいけないという規定がありますので、産科や小児科から独立した新生児科を設置している病院が多いんです。
また、24時間集中治療を行う必要がありますので、看護師の配置は24時間変わらず、患者3人に対して1人以上の看護師を置く必要があります。
そのため、NICUは夜勤の72時間ルールの適用外となっていて、看護師は一般病棟に比べて夜勤が多めという特徴があります。
NICUの看護師の業務内容
入院中の新生児のケア
NICUの看護師の業務内容は大きく2つに分かれます。1つ目は、入院している新生児のケアです。NICUに入院している患者は、通常の新生児室ではケアできないほど臓器が未発達だったり、抵抗力が非常に弱い子どもです。
ですから、NICUに入院している子どもは保育器に入って、心電図やSpO2などのモニター類がつながり、点滴をし、場合によってはマーゲンチューブが挿入されていたり、人工呼吸器を使用していたりします。
そのためNICUの看護師は、バイタルサインのチェックやモニター類の観察、医療機器の管理、薬剤の投与などを24時間体制で行います。これは成人用のICUと同じですね。そのほかNICUではオムツ交換や授乳なども行います。
患者の両親のケア
NICUの看護師の業務内容の2つ目は、両親のケアです。待望の赤ちゃんが生まれてきたのに、子どもがNICUに入院しなければならなかった両親のショックは想像できないほどです。
自分を責めたり、ショックのあまり保育器に入っている我が子の顔を見ることができない母親もいるんです。
ショックを受けている両親の精神的なケアをして、スムーズに家族関係を築いていく手助けをすることもNICUの看護師の重要な仕事の1つになります。
NICUの看護師のメリットとデメリット
NICUの看護師のメリット
NICUの看護師のメリットとデメリットを考えてみましょう。まずは、メリットからです。
NICUの看護師のメリットは、新生児ケアの最新の知識や技術が身につけられることです。NICUは新生児治療やケアに関しては最先端のものを導入していますので、NICUで働けば自動的に新生児ケアの最新知識・技術を身につけられるんです。
そのままNICUで長年勤めて知識や技術を深めていくのも良いですし、小児科や産科に異動してもその知識を活かしていくことができます。
またほかの診療科よりも家族看護をしっかり実践できるというメリットもあります。家族看護の重要性を知り、実践していきたいと思っても、一般病棟だと日々の仕事に忙殺されて、なかなか実践できないことも多いですよね。
でも、NICUだと家族看護を実践せざるを得ない状況ですので、忙しい中でも家族看護をしっかりと実践していける環境なんです。
また、夜勤回数が一般病棟よりも多い分、給料が高めであるというメリットもあります。
そして、何よりNICUの看護師は日々やりがいを感じることができます。生まれたばかりの赤ちゃんの命を守り、健やかな成長の手助けをして、無事退院する姿を見れば、「看護師になって良かった。NICUで働いていて良かった。」と思えるはずです。
NICUの看護師のデメリット
NICUの看護師のデメリットは、精神的にハードなことです。小さな赤ちゃんが人工呼吸器につながっていたり、鼻からマーゲンチューブを入れられているのを見るのはつらいですよね。
また、治療の甲斐なく亡くなってしまう赤ちゃんもいますし、1年以上NICUに入院している赤ちゃんもいます。
そして、両親のケアをするのもつらいことが多いんです。NICUに入院している赤ちゃんの両親は精神的なストレスを抱えています。NICUの看護師がそのストレスの捌け口になることもあるんです。
時には理不尽なクレームを言われたり、怒りをぶつけられることもあるでしょう。でも、NICUの看護師は感情的ならず、なぜ理不尽なことを言うのかを考え、その原因を取り除いたり、軽減するようなケアをしていく必要があるんです。
NICU(新生児集中治療室)に向いている人、必要なスキル
NICUの看護師はどんな人が向いているのか、また必要なスキルは何かを考えてみましょう。
NICUは生まれたばかりの新生児がつらい治療をしています。また、治療の甲斐なく亡くなってしまうこともあります。
また、両親は我が子がNICUに入っていることにショックを受けたり、未熟児であることや障害のあることを受け入れられなかったりして、そのストレスをNICUの看護師にぶつけてくることもあるんです。
でも、NICUの看護師は保育器に入っている赤ちゃんを見て自分が落ち込むわけにはいきません。また、両親に理不尽な怒りをぶつけられても怒るわけにもいかないんです。
それよりも、小さな命を助けるためにきちんと看護する必要がありますし、両親の精神的なケアを行わなくてはいけません。
ですから、NICUの看護師は精神的なタフさを必要とされるんです。どんな状況でも動じずに冷静に対処しなければいけません。
また、観察力も必要です。観察力はNICUのみならず、すべての看護師に必要とされるものですが、NICUでは特に高い観察力が必要不可欠になります。
なぜなら、NICUに入院している赤ちゃんは、大人のように自分の症状を言葉で伝えることができません。また、抵抗力が非常に弱く、状態が急変しやすいのです。ですから、NICUの看護師はちょっとした変化も見逃さない観察力が必要なんです。
どんなNICU(新生児集中治療室)がオススメ?
NICUで働きたいと思ったら、どんなNICUを選べば良いのでしょうか?NICUは常勤の新生児科(未熟児科)の医師の配置、産科や小児科とは兼任していない専従の当直医の配置、看護師配置は3:1以上と細かく決められていますので、ほかの診療科のように施設形態や病院ごとの特徴であまり大きな差はありません。
でも、もしNICUの中でも特に高度な医療に携わりたいという場合は、総合周産期母子医療センターがある病院のNICUを選びましょう。総合周産期母子医療センターはNICU9床以上、MFICU(母体胎児集中治療室)を6床以上備えている病院で、NICUの中でも重症な症例を扱いますので、高度で最先端の治療を行っているんです。
また、NICUでの集中治療だけでなく、退院へ向けてのケアまでトータル的な看護をしたい人は、GCUが併設されている病院のNICUが良いでしょう。
GCUとはGrowing Care Unitの略で回復治療室や発育支援室とも呼ばれるところで、NICUほどの集中治療は必要なく、状態が安定してきた赤ちゃんが退院へ向けての治療・看護を行うところです。
NICUとGCUは隣り合った位置に設置されていて、NICUの看護師はGCUを兼任することが多いので、GCUを併設している病院のNICUを選べば、トータル的な新生児ケアを行うことができるでしょう。
NICUの給料と給料アップ方法
NICUで働いた場合、お給料はいくら位になるのでしょう?NICUは24時間いつでも看護師配置は3:1以上と決められていて、夜勤は1ヶ月72時間以内というルールが適用されませんので、一般病棟よりも夜勤回数が多めになります。
そのため、夜勤手当が多くなりますので、一般病棟よりも給料は高めになります。また、NICUが設置されているのは大規模病院であることが多いんです。
病院の規模が大きくなればなるほど、看護師の給料は高くなる傾向がありますので、NICUの看護師の給料は看護師の平均以上をもらえると考えて良いでしょう。具体的には、年収500万円以上が目安になります。
NICUで給料をアップさせるには、やはりキャリアアップ、スキルアップが一番の近道です。NICUで役立つ資格は、新生児集中ケア認定看護師や助産師です。ただ、助産師は1年間学校に通って資格を取ったら、NICUではなく産科に異動となり、分娩を担当することがありますので注意しましょう。
また、AHA(アメリカ心臓学会)が定めるPALSのプロバイダーコースを受講したり、日本母性看護学会のセミナーに参加しても、NICUで役立つスキルを得ることができるでしょう。
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