ICUに向く人、要求されるスキル、ICUの選び方、給料アップ法
[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more..]
ICUに向いている人、必要なスキル
ICUに向いている人や必要なスキルは、観察力がある人、几帳面で細かい性格、冷静沈着な人、体力がある人、勉強熱心な人の5つになります。
ICUの患者さんはオペ直後など、状態が非常に不安定な人ばかりです。
そのため、いつ急変してもおかしくありません。
ICUの看護師は患者さんを観察して、少しの状態変化も見逃さないようにすることで、急変を未然に防いだり、異常を早期発見したりして、患者さんの命を救うことができるのです。
そのため、ICUの看護師は観察力に優れている人、鋭い観察力を持っている人が向いているのです。
ICUには几帳面で細かい性格の看護師が向いています。
ICUでは高度な治療が行われていますので、「たぶん大丈夫」とか「適当でOK」ということは許されません。
ちょっとしたミス、いい加減な看護を行うと、患者さんは死んでしまいます。
ICUでは鎮静剤や昇圧剤などをシリンジポンプを使って、微量ずつ薬剤を投与することがありますが、これらの薬剤は投与量が少し違うだけで、患者さんの状態に大きな影響を与えます。
ポンプを正しく設定することはもちろんですが、ポンプを過信せずに、常に自分の目で医師の指示通りの量が投与されているかをチェックしていかなくてはいけません。
また、尿量や出血量なども正確にカウントして、水分出納も細かく計算する必要があります。
ICUの患者さんはたくさんのルートがつながっています。トリプルルーメンのCVが2本入っていることもあります。
トリプルルーメンのCVが2本ということは、それだけで6本のルートがあるんです。
それ以外にも、Aラインやドレーン、経口挿管などたくさんのルートがつながっています。
ICUの看護師は、これらのルートをきちんと整理して、テンションがかからないようにしておかないと、体位交換の際にベッド柵に引っかかって抜けてしまうこともあります。
重要な薬剤が投与されているCVや経口挿管、そのほかスワンガンツカテーテルやIABP(intra-aortic balloon pumping)、PCPS(percutaneous cardiopulmonary support)などが抜けてしまったら、患者さんの命にかかわります。
ICUの看護師は几帳面で細かいことに気を配れる人でなければいけません。
ICUの看護師は、冷静沈着である必要があります。
ICUは呼吸停止や血圧低下などの急変が日常茶飯事です。
そして、急変対応中にも手術が終わった新しい患者さんが次々入室になることもあります。
そのため、急変が起こったり、忙しいからといってパニックを起こしていたら、仕事になりません。
どんな状況でも慌てることなく、優先順位をつけながら、冷静に対処していくことがICUの看護師に求められるのです。
ICUの看護師は、体力に自信のある人が向いています。
ICUはとても忙しいですし、患者さんの人数は少ないものの、全員ベッド上安静で体位交換やオムツ交換などが必要な人たちばかりですので、力仕事も多いです。
また、ICUは一般病棟のように看護師の夜勤時間に上限が設けられていません。
さらに、昼夜問わず24時間体制で高度な治療が行われていますので、夜勤だからといって看護師の人数を一般病棟のように減らすわけにはいきません。
そのため、ICUでは夜勤が多く、2交替制の場合は1ヶ月に6~7回の夜勤に入らなければいけないことがあります。
ICUは忙しく力仕事も多くて、さらに夜勤も多いので、体力が必要になるんです。
ICUの看護師は、勉強熱心であることが求められます。
ICUは診療科を問わず、重症な患者さんが入院しています。
内科も外科も、たくさんの診療科の患者さんが入院していますので、ICUの看護師は、幅広い知識が要求されるのです。
また、ICUでは高度で最先端の治療が行われますので、ICUの看護師は常に勉強を続けて、新しいことを勉強し、吸収して、対応していく必要があります。
ICUの看護師は勉強熱心でなければ働いていくことは出来ません。
でも、ICUで働けば、それだけたくさんのことを学び、たくさんのスキルを身につけることが出来ますので、看護師として成長していくことが出来ます。
ICUは勉強熱心で、どんどんスキルアップしていきたい看護師さんにおすすめします。
どんなICUがおすすめ?
ICUで働きたいと思っている看護師さんは、どのようなICUで働くかを考えましょう。
ICUは急性期病院にしかありませんし、外来があるわけでもありません。
そのため、一般的な診療科に比べると、ICUの職場の選択肢は多くありませんが、少しでも理想のICUで働くために、ICUを選ぶ時のポイントを3つ押さえておきましょう。
ICUを選ぶ時には、病院の規模やICUの病床数をチェックしましょう。
病院の規模が大きいところは、それだけ重症な患者さんが多いですし、難しい手術もたくさん行われています。
そのため、ICUに入る患者さんも重症な人が多く、最先端の医療を行っていますので、少しでもスキルアップしたいという看護師さんは、できるだけ規模が大きな病院のICUを選ぶと良いでしょう。
また、ICUの病床数が多いところは、それだけ病院内でICUの需要が高く、オペ後だけでなく、様々な症例を看ることができます。
いろいろな経験を積みたい人は、病床数が多めのICUを選ぶことをおすすめします。
逆に、ICUに興味はあるけれど、ICUでやっていけるか不安だし、重症患者の看護に自信がないという人は、小規模病院のICUを選ぶと、ストレスなく働いていけると思います。
ICUを選ぶ時には、病院内にCCUやSCUがあるかどうかをチェックしましょう。
CCUは、「Coronary Care Unit」ですので、循環器系疾患専門のICUになります。
SCUは、「Storoke Care Unit」で、脳卒中専門のICUのことですね。
院内にCCUやSCUがある病院は、ICUを細分化することで、診療科・疾患ごとに専門的で高度な医療を行うようにしているので、最先端の医療を行っているという証拠になります。
でも、院内にCCUやSCUがあると、その病院のICUには循環器疾患や脳卒中の患者さんは入院しないということになるんです。
そのため、CCUやSCUがある病院のICUは、消化器疾患や呼吸器疾患の患者さんが中心になりますので、ICUでは循環器疾患や脳卒中の患者さんの看護をすることができません。
ICUで働く看護師は、CCUやSCUが院内にあるのか、どんな疾患の患者さんが多いのかを確認しておかなければいけません。
ICUで働くなら、HCUが併設されているかを確認して下さい。
HCUは、「High Care Unit」の略で、ICUと一般病棟の中間的存在と考えるとわかりやすいと思います。
ICUの中にHCUが併設されているところは、ICUの看護師がHCUの患者さんの看護もします。
そのため、超重症患者だけでなく、もうすぐ一般病棟に移れるような患者さんも看ることになります。
とにかく重症患者の看護、クリティカルケアの経験を積みたいという人にとっては、HCUがない方が良いと思います。
でも、HCUが併設されていると、ICUの超重症で意識がない患者さんの看護だけではなく、HCUの意識がある患者さんの看護ができます。
つまり、患者さんとコミュニケーションを取りながら働けるというメリットもあるのです。
「意識がない患者さんの看護ばかりだと息が詰まる」、「時々は患者さんと会話しながら働きたい」という人は、HCUが併設されたICUを選ぶと良いでしょう。
ICUの看護師の給料と給料アップ方法
ICUの給料と給料アップ方法を説明します。
ICUの給料は、一般病棟の給料に比べるとやや高めです。
給料の目安は、地域や病院の大きさによって異なりますが、経験5年目で月収30~35万円が目安になります。
ICUの給料が一般病棟よりもやや高めになる理由は、2つあります。
(1)1つ目は「ICU手当」などの特別手当がつくことです。
数千円程度のことが多いですが、それでも手当が付くのと付かないのでは、全然違いますよね。
(2)また、ICUでは夜勤回数が一般病棟よりも多いので、夜勤手当がたくさんついて、給料が高くなるのです。
ただ、日勤と夜勤の看護師人数の差が少ない分、残業は少なめになりますので、時間外手当は一般病棟よりも少ないことが多いです。
そのため、ICUは一般病棟よりも大幅に給料が良いわけではなく、1~2万円高い程度になります。
次に、ICUの給料アップ方法をご紹介します。どうせ働くなら、給料は高い方が良いですよね。
ICUの給料アップ方法は、できるだけ大きな病院のICUを選ぶことです。
大規模病院は、基本給が高く、ボーナスも多めで、各種手当も充実していますので、小規模病院から大規模病院に転職するだけで、年収が大幅アップすることがあります。
大規模病院のICUは超重症の患者さんが多いですので、年収がアップしつつ、ICUの看護師としてたくさんの経験を積むことができるでしょう。
ICUでの給料アップ方法の2つ目は、ICUで役立つ資格を取得することです。
ICUで役立つ資格を取得して、キャリアアップすれば、それが評価されて、給料アップを狙うことができます。
ICUで役立つ資格を6つご紹介します。
これは、医師や救急隊に引き継ぐまでの処置ですので、AED以外の医療機器や薬剤は使いません。
BLSは入職時などの院内研修で一通り学んだという看護師さんが多いと思いますが、ICUで働く前、もしくは配属になってから、もう一度、日本ACLS協会のBLSプロバイダーコースなどの研修を受けておくと安心です。
BLSの研修は1日間(7~8時間)になり、筆記試験と実技評価で試験が行われます。
看護師にはややレベルが高い研修ではありますが、ICUで働く上では必ず役に立つ研修ですので、ぜひ研修を受けるようにしましょう。
ACLSの研修は、日本ACLS協会や日本BLS協会などが行っています。
ACLSの研修は2日間(15時間)行われるのが一般的で(研修母体によっては1日コースもあり)、筆記試験と実技評価での試験が行われます。
突然の心停止に対してどう対処すべきかを学びますので、急変が多いICUでは役に立つ資格になります。
ICLSは1~2日間のコースになっています。
呼吸療法認定士は、呼吸療法の目的や理論、治療の実際などについて、高度な専門知識を持ち、呼吸療法の実施やその遂行に用いる機器の管理などを行うことができると認められた資格になります。
呼吸療法認定士は常勤の看護師経験が2年以上あり、受講申し込みの申請時から過去5年以内に、認定委員会が認める学会や講習会に出席して12.5点以上の点数を取得しておく必要があります。
その上で、2日間の講義を受け、筆記試験に合格すると、3学会合同呼吸療法認定士の資格を取得することができます。
集中ケア認定看護師は、以下の3点が前提条件となります。
- 看護師経験5年以上(通算3年以上集中ケア部門での経験)
- 疾病・外傷・手術などにより高度に侵襲を受けた患者の看護を5例以上担当した実績
- 現在集中ケア部門で働いていること
その上で、630時間(+30時間)の研修を受け、認定試験に合格し登録すると、集中ケア認定看護師になることができます。
急性・重症患者看護専門看護師は、緊急度や重症度の高い患者に対して集中的な看護を提供し、患者本人とその家族の支援、医療スタッフ間の調整などを行うことが仕事です。
専門看護師は臨床現場での看護実践以外にも研究や調整などを通して、保健医療福祉の発展に貢献し、看護学の向上にも寄与するという役割も持っています。
専門看護師になるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 看護師経験が5年(専門分野での勤務経験が3年)以上
- 看護系大学院の修士課程を修了(所定の26単位または38単位を取得)
- 認定試験に合格する
ICUに役立つ資格を取得すると、給料アップにつながります。
しかし、「集中ケア認定看護師」と「急性・重症患者看護専門看護師」以外の資格は、すぐにお給料に直結するわけではありません。
資格を取得して、それを仕事で活かしていくことで、「主任などの役職に就くチャンス」や、病院の資格取得支援制度を使って「認定看護師や専門看護師になるチャンス」が周ってくるようになるんです。
役職に就けば役職手当が付きますし、認定看護師や専門看護師になれば、資格手当が付きますので、給料をアップさせることができるでしょう。
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