透析室の特徴と透析看護師の仕事、適性・スキル、給料アップ方法
[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more..]
透析室の特徴
透析室は人工透析科とも呼ばれていて、人工透析を専門に行うところです。人工透析をしている患者さんは年々増加していて、2013年末時点で31万4180人となっています。
高齢化に伴って、今後も数年間は人工透析患者数が増えていくと予想されていますので、透析室の需要はさらに高まると考えられます。
透析室の特徴は、患者さんが病識をしっかり持っていることです。人工透析を導入すると、週3回の透析を一生続けていかなくてはいけません。そのため、患者さんは自分の疾患や透析に関する知識を持つようになります。
また透析室で働く看護師は、ベテランが多いことも透析室の特徴の1つです。人工透析科に新人看護師は、ほとんど配属されません。
クリニックでも病院でも、一般病棟などで経験を積んでから、透析室に転職・異動してくることが多いので、30代以上のベテラン看護師の割合が非常に高くなっています。
透析室の看護師の業務
透析室の看護師の業務は、人工透析がスムーズに安全に行われるための看護がメインになります。
まずは、穿刺と透析装置の操作です。透析装置の準備をした後、血液透析を始めるためにシャントに穿刺し、血液透析を開始します。血液透析自体は透析装置が自動で行ってくれますが、血液透析が開始されたら看護師の仕事が終了というわけではありません。
血液透析中もバイタルチェックを行ったり、装置が正常に作動しているかどうかの確認などを行います。
また、急変対応も人工透析科の看護師の仕事の1つです。透析室は基本的に日常生活を自宅で送っている患者さんばかりなので、急変対応が多いなんて意外に思うかもしれません。
でも、健康な人だったら48〜72時間かけてゆっくりと腎臓で行う透析を人工透析の場合は、4〜5時間で一気に行いますので、その分電解質のバランスなどが崩れやすく、身体への負担が大きいのです。
そのため、透析中は血圧低下や不整脈などの急変が起こりやすく、透析室で働く看護師はその対応に追われることになります。
透析室の看護師の仕事でもう1つ重要なものは、患者さんへの生活指導です。人工透析を導入している患者さんは、厳しい食事制限や水分制限を強いられますが、それをきちんと守らないコンプライアンスの悪い人が少なからずいます。
そういう患者さんへ食事や水分制限方法のアドバイスをして、生活指導を行わなくてはいけません。
透析室のメリットとデメリット
透析室で働くメリット
看護師が透析室で働くメリットとデメリットを考えてみましょう。まずは、透析室のメリットからです。
透析室で働くメリットは、高い専門性が身につけられることです。透析看護は専門性が高い分野ですので、透析看護の経験があれば、何らかの理由で一度看護師を辞めた後、また看護師として働きたいと思った場合、再就職先を探すのに有利になります。
また、認定看護師やその他の資格取得もできますので、キャリアアップの道も広がっています。
もう1つのメリットは、日勤のみでも比較的高収入を得られることです。透析室はクリニックが多いので、クリニックで働けば夜勤はありません。そして、外来やクリニックなど一般的な日勤のみの仕事に比べると、透析室の給料は高い傾向にあります。
透析室で働くデメリット
人工透析科のデメリットは、患者さんとのコミュニケーションが大変な点です。透析を導入している患者さんは、透析に関して「ベテラン患者」で、医療者顔負けの知識を持っている人もいます。
そのため、穿刺に失敗したりちょっとミスをしただけで、からかわれたりバカにした態度を取られることもあるんです。そういう患者さんとコミュニケーションを取ることにストレスを感じる看護師さんも少なくありません。
透析室に向いている人、必要なスキル
透析室で働くのに必要なスキルは、コミュニケーションスキルです。人工透析の患者さんは、全員意識がはっきりしていますし、透析に関してはベテラン揃いです。そのため、ちょっとしたミスをした時に患者さんから意地悪を言われたりすることもあります。
そういう時でも、明るく笑顔で上手に受け流せるような対応力やコミュニケーションスキルが必要になります。
また、患者さんへの生活指導も人工透析科の看護師の仕事ですので、そういう意味でもコミュニケーションスキルは重要です。
そして、育児や家庭と仕事を両立させながらも、キャリアアップしたい看護師さんは透析室に向いています。透析室は夜勤がありませんので、育児や家庭と仕事を両立させやすいんです。
また、既婚者や育児中・育児経験者のベテラン看護師さんが多いので、同じように育児や家庭と仕事を両立させながら働いている人の割合が高いんです。職場に同じような環境の人がいて、両立に理解があると働きやすさが全然違ってきます。
そして、透析看護は専門性が高いですし、透析看護の認定看護師や透析療法指導看護師、透析技術認定士などのキャリアアップができますので、育児や家庭と仕事を両立させつつ、キャリアアップしたい人にとって、透析室はピッタリの職場なんです。
どんな透析室がオススメ?
では、実際に透析室で働こうと思ったら、どんな透析室を選べば良いのでしょうか?
透析看護の経験がない、透析看護が自分に合っているのか不安
透析看護の経験がない、透析看護が自分に合っているのか不安という看護師さんは、病院に併設されている透析センター(透析外来)を選びましょう。病院内の透析センターであれば、もし「透析室での仕事が自分に合わなかった」という場合でも、違う科への異動希望を出すことができます。
転職後すぐに辞めてしまうと、次の転職に影響が出る場合がありますので、透析看護に興味はあるけど不安もあるという人は、病院内の透析センターを選ぶと良いでしょう。
家庭や育児を優先させたい
また、透析室は通常午前、午後、夜間の3部制で透析を行いますが、クリニックによっては夜間は毎日ではなく週2〜3回としているところもあります。
夜間透析を行うと、勤務終了は23〜0時になりますので、完全に日勤のみが良い人や育児や家庭を優先させたい人は、夜間透析を毎日やっていないところを選ぶと、負担が少なくて済みます。
穿刺に自信がない
そして、穿刺に自信がないという看護師さんもいますよね。そういう人は、穿刺は医師や臨床工学技士が行い看護師は行わないと決めている透析室を選びましょう。そういう透析室はあまり多くはありませんが、穿刺がない透析室を選べば、精神的な負担が軽くなります。
透析室の給料と給料アップ方法
透析室の給料は、いくら位なのでしょう?透析室で働く看護師の給料は月収25〜30万円が相場となるようです。年収にすると、430〜450万円前後ですね。
一般的な外来やクリニックの年収は380万円前後となりますので、人工透析科は日勤のみの仕事の中では、高給与と言えるでしょう。
透析室での給料アップ方法は、経験を積んでキャリアアップしていくことです。透析看護のキャリアアップといえば、認定看護師がありますが、認定看護師は6ヶ月間の研修を受けなければいけませんので、ややハードルが高いのが難点です。
認定看護師以外のキャリアアップ方法として、透析療法指導看護師や透析技術認定士の資格取得があります。この2つの資格は、透析看護の経験が一定以上あれば、比較的簡単に取得することができます。
これらの資格を取得して、職場にそれを評価してもらえば給料はアップしますよね。もし、今働いている職場で評価してもらえなかった場合でも、きちんと評価してくれるところへ転職すれば給料アップにつながるでしょう。
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