[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more..]
国立病院機構の看護師は国家公務員ではない
国立病院機構 東京医療センター: http://www.ntmc.go.jp/p_other/contents/35.html
国立病院機構とは、正式名称を「独立行政法人 国立病院機構」と言います。
独立行政法人国立病院機構は、全国に143の病院を持ち、病床数は5万4,663床、職員数は約6万人と日本最大級の病院ネットワークになっています。
(参考:国立病院機構の概要 - 国立病院機構 https://www.hosp.go.jp/about/cnt1-0_000003.html)
ここで、「あれ?」と思った方がいるかもしれませんね。国立病院機構は「独立行政法人なの?国立じゃないの?」という疑問です。
確かに、「独立行政法人 国立病院機構」という名前からは、いったい国立なのか、そうじゃないのかが分かりにくいですね。
実は、国立病院機構は国立の病院ではありません。あくまで「独立行政法人」です。
名前だけに、かつての名残りの「国立」が残っているだけなんです。
そのため、国立病院機構で働いても、国家公務員になれるわけではないのです。
国立病院機構の病院は、2004年3月31日までは厚生労働省直轄の国立病院でした。
ところが、2004年4月1日からは、独立行政法人国立病院機構が、全国にある国立病院や療養所を国から引き継いで運営することになったんです。
2004年4月からは、国立病院ではなくなったということです。
それでも、2015年3月31日までは「特定独立行政法人」でしたので、国立病院機構の職員は国家公務員の”身分”として働くことができました。
それも、2015年4月1日からは特定独立行政法人から外れることになり、一般の独立行政法人(非特定独立行政法人)となりましたので、職員の身分も国家公務員ではなくなったのです。
そのため、看護師が国立病院機構で働いても、国家公務員になれるわけではありません。
2015年4月からは厚生労働大臣が5年間の中期目標を作成し、それに基づいた運営をしています。
国立病院機構は国立の医療施設と民間の病院の中間のような存在なのです。
でも、国立病院機構で働く看護師は、国家公務員になれるわけではないので、基本的には民間の病院で働くのと変わらないと考えて良いでしょう。
国立病院機構で働いても国家公務員になれないのは、ちょっと残念ですね。
ただ、もともとの運営母体は国ですし、今でも厚生労働大臣が作成した目標を基に運営されていますので、身分は国家公務員ではないとはいえ、国家公務員と同じような待遇で働くことができます。
国立病院機構の看護師の年収
国立病院機構の看護師の年収を説明していきます。
まずは新卒の看護師さんからです。国立病院機構の看護師の給料は、地域手当というものがつきます。
地域手当は全国のどの病院に勤めるのかによって、手当額が変わりますので、国立病院機構の新卒看護師の給料は全国どこでも同じというわけではありません。
ただ、国立病院機構の給料は「独立行政法人国立病院機構 職員給与規定」で決められていますので、基本給や地域手当以外の各種手当は、国立病院機構ならどこでも同じです。
新卒看護師さんが国立病院機構に入職し、3交替制の夜勤に月8回入り、病院から5qのところの賃貸住宅に住んでいた場合の給料です。
大卒 | 月収 27万2,000円〜30万9,000円 |
3年課程卒 | 月収 26万2,000円〜29万8,000円 |
出典:けっこういいぞ!NHO(PDF)
これは、新卒看護師の平均給料と比べて高いのでしょうか?看護協会のデータで比べてみましょう。
大卒 | 月収 27万201円 |
3年課程卒 | 月収 26万2,074円 |
出典:看護職の賃金水準データ(2013年版) | 日本看護協会
これを見ると、国立病院機構で働くと、一般の新卒看護師さんよりも給料がやや高めであることがわかりますね。
これにボーナスが年間4.1〜4.2ヶ月分が支給されます。しかも、業績が良い病院の場合だと、年度末賞与も出るんです。
では、具体的な年収を名古屋市内にある国立病院機構で働いた場合で見ていきましょう。
これは、3年課程を卒業した後に入職して、借家(家賃5万5,000円)、自動車通勤(片道10q)、夜勤(準夜・深夜各4回)入った場合の年収です。
1年目 | 年収 約450万円 / 月収 約30万円 |
5年目 | 年収約 510万円 / 月収 約34万円 |
出典:募集要項|看護師・助産師|職員募集・学生募集|独立行政法人 国立病院機構 東海北陸グループ
どうですか?厚生労働省の「平成27年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収は約478万円です。
それと比べて、新卒看護師の時点で、平均年収とそれほど変わらないだけ稼ぐことができ、5年目になれば、看護師の平均年収よりも30万円以上稼げることになります。
看護師の職場の中でも高収入を狙える職場と言えるでしょう。
【看護師の平均年収】
日本看護協会のデータで年収519万円というものがあるようですが、これは2012年のデータなので少し古いです。
また、人事院のデータから年収519万円という数字を出しているところもあるようですが、人事院は月収調査はしていても、年収調査はしていないとのこと。「519万円については確認出来ない」が公式見解です。
当サイトでは、毎年発表される厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の最新データから看護師の年収を計算しています。
そして、国立病院機構では、昇給がしっかりあるのも良いですね!
1年目の年収は450万円、5年目は510万円と5年で60万円も年収がアップしています。
国立病院機構では、長く働けば働くほど給料がしっかり上がっていくのです。
では、国立病院機構で長く働いて、将来看護師長や看護部長などの管理職になった時の年収はどのくらいになるのでしょうか?
<国立病院機構の管理職の看護師の年収>
役職
|
年収 |
看護部長 | 約 930万円 |
副看護部長 | 約 800万円 |
看護師長 | 約 740万円 |
副看護師長 | 約 620万円 |
国立病院機構で管理職になれば、年収は600万円を超えます。
看護師長になれば700万円オーバー、副看護部長なら800万円に到達、看護部長なら900万円以上です。
これだけ稼ぐことができるなら、思い切って管理職を目指してみようかと思えますよね。
やはり、「看護部長の年収=約930万円」と具体的な数字が示されているのは、目標になりますし、夢があります。
国立病院機構で働く看護師の4つのメリット
国立病院機構の看護師のメリットを紹介していきます。国立病院機構の看護師のメリットは、給料が高いだけではありません。
国立病院機構の看護師の給料以外のメリットは、次の4つです。
働きやすい職場環境 | 診療看護師の活躍の場がある |
全国に転勤できる | 職場は急性期だけではない |
働きやすい職場環境
国立病院機構の看護師のメリットの1つ目は、働きやすい職場環境が整っていることです。
国立病院機構は元々は国立病院でしたので、福利厚生は国家公務員に準じたものなんです。
例えば、子育て支援制度。一般的な育児休暇は、子供が1歳になるまでですよね。産休は2ヶ月+育児休暇10ヶ月で復帰する人が多いと思います。
でも、国立病院機構の育児休暇は、子供が3歳になるまで取得することができます。これだと、子供が小さい時は子育てに専念したいという人でも、無理なく働くことができます。
院内保育所は114病院で完備されています。国立病院機構が143病院ある中で、114病院が保育所完備というのは、働くママさん看護師として助かりますね。
年間休日は4週8休+国民の祝日+夏季休暇+年末年始休暇と130日近くありますので、ワークライフバランスを取って働ける職場環境が整っています。
全国に転勤できる
Photo: https://www.hosp.go.jp/~tohkai/about/
国立病院機構は全国に143の病院があります。そのため、あなたの都合によって全国に転勤することができるのです。
例えば、旦那さんが転勤になった時、国立病院機構に勤めていれば、あなたは退職する必要がありません。もちろん、旦那さんが単身赴任をする必要もありません。
あなたが、旦那さんの転勤先の近くにある国立病院機構に転勤すれば良いのです。
全国に143もあるのですから、旦那さんの転勤先から通勤できる範囲に、1つくらいは国立病院機構の病院があるはずです。
同じネットワーク内の病院に転勤するんですから、転勤先でもそれまでと同じ基本給、それまでと同じポストで働くことができます。
面倒な転職活動をせずに済む、知らない土地で一から求人探しをしなくて済むのは、とても大きなメリットですね。
診療看護師の活躍の場がある
国立病院機構のメリットの3つ目は、診療看護師の活躍の場があることです。
診療看護師とは日本版ナースプラクティショナーのようなものです。ナースプラクティショナーはアメリカで生まれた資格で、一次診療ができる看護師のことです。
日本では、看護師が診療をするのを認められていませんが、一般社団法人日本NP教育大学院協議会が診療看護師(NP)の資格を認定しています。
診療看護師はナースプラクティショナーのように、診療できるだけの知識・技術を学び修得した看護師なのです。
ただ、日本では診療看護師は実際に診療することが出来ないので、なかなかその資格を活かすことが難しいのですが、国立病院機構では診療看護師を高く評価し、アメリカのナースプラクティショナーに近い活動ができるように、病院全体で支援しています。
しかも、診療看護師になると、月額6万円もの手当がつきます。
診療看護師になるためには、大学院の修士課程で2年間学ぶ必要がありますが、国立病院機構では研究休職制度があります。
研究休職制度を使えば、病院に在籍している身分で、基本給の一部を貰いながら、修士課程で学ぶことができます。
職場は急性期だけではない
国立病院機構というと、急性期病院をイメージしているかもしれません。
確かに、総合病院として最先端で高度な医療を行っている病院は多いのですが、国立病院機構の病院はそれだけではありません。
慢性期病院もありますし、精神科専門病院もあります。重症心身障害の専門医療施設もあります。
そのため、あなたの興味や希望に合わせた看護をすることができます。
例えば、国立病院機構の急性期病院で働いていたけれど、慢性期看護に興味を持ったなら、転勤すれば良いですね。
国立病院機構の看護師のデメリット
国立病院機構の看護師のデメリットは、何があるでしょうか?
実は、国立病院機構で看護師が働くデメリットはほとんどないのです。
給料も高めで、働きやすい職場環境で、全国の病院に転勤可能で、興味のある看護分野で働けるのですから、デメリットというデメリットはないのです。
あえて言うなら、国家公務員の身分ではなくなったことでしょうか。
独立行政法人になった後も、2015年3月までは国家公務員の”身分”だったのですが、2015年4月からは国家公務員ではなくなってしまいました。
やはり「国家公務員」というブランドがなくなるのは、デメリットと言えるかもしれません。
ただ、国家公務員ではなくなったからといって、特に大きな変化があるわけではないのです。
国家公務員でなくても、国立病院機構は元の運営母体が国であり、全国に143もの病院を持っているわけですから、国家公務員並みに安定しています。
給料も福利厚生も国家公務員に準じたものになっています。
そのため、看護師の場合、「国家公務員」という身分のブランドを考えなければ、待遇的には国家公務員であってもなくても、大きな違いはないのです。
むしろ、国家公務員という堅苦しい縛りがない分、気楽であると言えるかもしれませんね。
また、公務員は雇用保険がありませんが、公務員でなくなった後は雇用保険を掛けるようになりました。
雇用保険があると、退職後の失業保険を受け取れるので、公務員の身分でなくなったことは、デメリットであるとは言い切れないのです。
国立病院機構で働きたいなら、転職支援サイトを利用すると良いですよ。
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