手術室看護師の仕事内容、役割、必要なスキル
[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more..]
手術室の看護師の役割は2つに分けられる
「手術室での仕事に興味があるけれど、手術室看護師の仕事内容や役割が具体的にイメージできない」という人は多いと思います。
また、「手術室での看護師は看護をしているのではなく、医師の指示で器械類を手渡しているだけでは?」と誤解している人もいるでしょう。
確かに、手術室は外来や病棟と比べると少し特殊な場所です。
病棟の看護師は手術室の入り口まで行くことはあっても、手術室の内部に入ることはほぼありません。
そのため、手術室の実情や看護師の仕事ぶりがなかなか見えてこないので、手術室の看護師の仕事内容や役割がイマイチよく分らないのです。
手術室経験がない看護師にとっては、器械出しの方が外回りよりも難しそうというイメージがあるかもしれません。私も以前はそう思っていました。
でも、実は外回りの方が難しいので、手術室で働く新人看護師は、まずは器械出しの仕事から始めることになります。
器械出しの看護師と外回りの看護師の仕事内容や役割、必要なスキルをそれぞれ説明していきます。
手術室の看護師は、器械出し看護師(直接介助)と外回り看護師(間接介助)の2種類の仕事があります。
器械出しの看護師の仕事内容や役割、必要なスキル
器械出しの看護師は、簡単に言うと「メス」と言われたら、医師にメスを安全にタイミングよく手渡す仕事です。世間一般で言う手術室の看護師のイメージどおりの仕事ですね。
器械出しの看護師の仕事内容
器械出しの看護師の仕事内容は、医師に安全にタイミングよく手術に使う器械類を渡していく仕事ですが、器械出しの仕事はそれだけではありません。
器械出しの看護師の1日の流れを見ていきましょう。
時間
|
器械出しの看護師の仕事内容 |
8時30分 | 全体ミーティング |
8時45分 |
手術前の準備 |
9時30分 |
患者さんの入室 |
10時30分 |
執刀開始 |
14時00分 |
手術終了 |
14時30分 | 昼休憩 |
15時30分 |
翌日担当する手術の準備 |
17時00分 | 勤務終了 |
これが基本的な器械出し看護師の1日の仕事の流れです。
これは、1日1回の手術に入る例ですが、手術時間によっては午前と午後の2回、手術に入る場合もあります。
器械出しの看護師の仕事の基本は、必要な器械を医師に適切なタイミングで、安全に手渡すことです。
それ以外にも手術の進行状況を外回りの看護師に伝えて、外回りの看護師に必要な器械を用意してもらったり、外回りの看護師が進行状況に応じて動けるようにすることも、器械出しの看護師の仕事になります。
また、切除部位は病理に出すこともありますし、そのまま処理したり、手術室内で保存することもありますので、執刀医に確認し、外回りの看護師さんに正確に伝えます。
外回り看護師と連携しながら、働くんですね。
ガーゼや器械のカウントも器械出しの看護師の大切な役割です。
器械は数が揃っているかを確認すればOKですが、ガーゼは枚数と重さも計測して、手術中のIn/Outバランスを計算します。
重さやIn/Outバランスを計算するのは、外回りの看護師ですが、器械出しの看護師は手術で使用したガーゼは、グチャグチャにせずに、きちんとカウントできるように扱わなければいけません。
手術が終わったら、後片付けをして、翌日の準備を行います。
器械出しの看護師は、翌日に使用する器械がきちんと揃っているか、滅菌がかかっているかを確認します。
大きな病院だと、滅菌業務は中央材料室が行って、滅菌済みの器械セットを持ってきてくれますが、小さな病院の手術室だと、手術室の看護師が滅菌をかけることになります。
器械出しの看護師に必要なスキル
器械出しの看護師に必要なスキルは、次の4つです。
1.解剖生理の知識
2.器械類の知識
3.先読みする能力
4.反射神経
1つ目は、解剖生理の知識です。
器械出しの看護師は、解剖生理に詳しくないと仕事ができません。オペをする部位の解剖がきちんと分っているから、適切な器械を出せるのです。
例えば、鉗子は大きくペアンとコッヘルに分けられますが、さらにどちらも直型と弯曲型の2つに分かれ、さらに大きさもいろいろあります。
医師から「鉗子」と言われた時に、解剖生理をきちんと理解していると、「このタイミングでこの部位に使うなら、この鉗子」と適切な鉗子を渡すことができます。
2つ目は、器械類の知識です。
これは当たり前のことですね。器械類の名前と用途を正しく把握していないと、器械出しの仕事はできません。
手術室の看護師は、手術で使う器械の専門家なのです。
医師は、自分の診療科の手術で使う器械しか知りませんが、手術室の看護師は診療科を問わず、全ての器械を把握しておかなくてはいけません。
時々、執刀医から「こんな感じにしたいんだけど、なんか良い器械知らない?」など聞かれる事もあるほどです。
ですから、器械出しの看護師は器械類の名前と用途は、正確に把握しておきましょう。
3つ目は、先読みする能力です。
例えば、器械出しの仕事をしながら術野を見て、「この患者さんは、臓器が癒着しているから、出血するかも」と思ったら、止血に必要な鉗子やモノポーラなどを用意しておくことができます。
このように、「このケースだとこうなるかも」と手術の進行状況の先読みする力があると、器械出しの看護師のおかげで、手術を安全に進めることができるのです。
大量出血して執刀医が慌てて用手的止血をしている時に、器械出し看護師が冷静にあらかじめ用意しておいた止血のための鉗子を出したら、カッコいいと思いませんか?
4つ目が反射神経です。
適切なタイミングで、安全に医師に器械を渡すには、反射神経が必要です。
また、手術室の看護師はどうしても針刺しなど感染リスクが高くなります。
特に、器械出しは医師との器械類の受け渡しの際に、針刺しをしてしまうことが多いんです。
ただ、反射神経が良ければ、医師と適切なタイミングで受け渡しができますし、危ない時でも回避できるので、針刺しのリスクが下がります。
この反射神経は慣れである程度補うことが出来ますので、反射神経がなければ、器械出しの仕事できないと言うわけではありません。
おっとり型の看護師さんでも、手術中は集中して、タイミング・針刺し等に気を付けていれば大丈夫ですよ!
器械出しの看護師は、執刀医に必要な器械をタイミングよく渡す仕事です。 外回りの看護師と連携を取りながら働く必要があります。 器械出しの看護師に必要なスキルは、【解剖生理の知識】、【器械類の知識】、【先読みの能力】、【反射神経】です。
外回りの看護師の仕事内容や役割、必要なスキル
外回りの看護師は、器械出しの看護師の仕事以外のことを担当し、手術全体のサポートするのが仕事です。
手術室の看護師というと、器械出しの看護師のイメージが強いですし、外回りよりも器械出しの仕事の方が難しいと思っている看護師さんは多いと思います。
でも、外回りは手術室全体の状況を把握しながら働く必要がありますので、器械出しの仕事ができるようになってから、外回りの仕事をすることになります。
外回りの看護師の仕事内容
外回りの仕事内容は、器械出しの看護師が担当する以外の仕事全般ですから、とても幅広いものになります。
具体的にどんな仕事をするのかを説明するよりも、まずは外回りの看護師の1日の流れを見ていきましょう。
時間 |
外回りの看護師の仕事内容 |
8時30分 | 全体ミーティング |
8時45分 |
手術前の準備 |
9時30分 |
患者さんの入室 |
10時30分 |
執刀開始 |
14時00分 |
手術終了 |
14時30分 | ICUや病棟看護師への申し送り |
15時00分 | 昼休憩 |
16時00分 |
翌日担当する手術の準備 |
17時00分 | 勤務終了 |
この1日の流れを見ると、外回りの看護師の仕事の範囲がとても広いことがわかると思います。
外回りの看護師は手術がスムーズに進むのを支援するだけでなく、患者さんの安楽にも気を配らなくてはいけません。
手術中は執刀医やそのほかのスタッフは、手術を安全に早く終わらせることに集中していますので、安楽にまで気を配ることはありません。
しかし、いくら手術中とはいえ、患者さんの安楽は守られるべきです。
手術は成功しても、褥瘡ができてしまったのなら、その手術は成功とは言えないでしょう。手術中に患者さんの安楽を守るのは、外回りの看護師です。
「手術室の看護師は看護をしていない」と思っている人もいますが、外回り看護師の仕事を見ると、「きちんと看護をしている」、「看護師としての視点を重視して仕事をしている」ことが分ると思います。
また、手術には執刀医、助手、麻酔科医、看護師、臨床工学技士とたくさんの人が関わっています。つまり、チーム医療を行っています。
チーム医療がスムーズに進むためには、調整役が必要です。その調整役が外回り看護師なのです。
また、手術中は執刀医がイライラし出すと、手術室全体の空気が悪くなります。
その悪い雰囲気をいち早く察知して、執刀医が気分よく仕事ができるように、手術室の空気が良くなるように工夫をするのも、外回りの看護師の仕事と言えるでしょう。
術前訪問も外回りの看護師の仕事です。術前訪問では患者さんの手術に対する不安を解消し、さらに手術に必要な情報収集をして、翌日の手術に活かします。
外回りの看護師に必要なスキル
外回りの看護師に必要なスキルは、次の3つがあります。
1.コミュニケーションスキル
2.広い視野
3.気配り力
外回りの看護師に必要なスキルの1つ目は、コミュニケーションスキルです。
手術室の看護師は、「コミュニケーションスキルは要らない」と思われがちですが、そんなことはありません
術前訪問では、短い時間の中で、患者さんの手術に対する不安を解消し、さらに翌日の看護計画に活かせる情報収集を行わなくてはいけません。
また、手術当日も入室後の麻酔導入前は不安でいっぱいの患者さんに声掛けをして、少しでも不安を取り除くケアをする必要があります。部分麻酔の患者さんは術中も声掛けが必要ですね。
外回りの看護師は手術全体の調整役です。
執刀医や麻酔科医、臨床工学技士、器械出しの看護師と随時コミュニケーションをとりながら働くので、コミュニケーションスキルはとても大切なのです。
外回りの看護師に必要なスキルの2つ目は、広い視野を持つことです。
外回りの看護師は、手術室全体を見て、手術の進行状況を把握しながら働く必要があります。
そのため、例えばガーゼカウントをしながらも、手術の進行状況を把握する必要がありますし、記録をしながらも、患者さんの安楽やバイタルに気を配らなければいけないのです。
外回りの看護師に必要なスキルの3つ目は、気配り力ですね。
外回りの看護師は、気配り上手である必要があります。
外科医は、短気で「俺様気質」の人が多いですよね。そのため、手術中に怒鳴り散らしたり、イライラしたりすることが多いんです。
器械出しの看護師や助手に文句を言うことも度々あります。
そんな時に、外回りの看護師は執刀医が手術に集中できるように、また器械出しの看護師や助手が萎縮しないように、上手くフォローしなければいけません。
また執刀医や器械出しの看護師などが何を求めているか、何か必要なものがあるかに気を配って、手術が円滑に進むように配慮します。
外回り看護師は手術室全体を見渡しながら、患者さんの安全・安楽に配慮して、手術がスムーズに進むように支援する仕事です。 外回り看護師に必要なスキルは、【コミュニケーションスキル】、【広い視野】、【気配り力】の3つです。
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