脳神経外科に勤務している頃の話です。
その日、私は入浴介助をする日でした。
一般の浴槽に入る事が困難な意識状態があまりよくない患者さんを、ストレッチャーを使用し入浴の援助をするのです。
入浴介助用の作業着に着替え、張り切って介助をしていました。
浴室では、患者さんと私の二人きりです。
私の張り切りと、二人だけという空間と、浴室の音響がからみあい、意識刺激と称して、歌を歌ってしまいました。
もちろん患者さんの年代に少しでも近づけるような「美空ひばり」を歌ったような気がします。カラオケが大好きだった私は、気分が良くなってきて、声が大きくなっていたのでしょう。
介助が終わって、浴室を出たら、数名の患者さんがいて、笑いながら拍手をしていました。
浴室の隣のお部屋まで、聞こえていたようです。
恥ずかしいやら、嬉しいやらで、私もニヤニヤしてしまいました。
患者さんの笑顔が見られる業務なので、入浴介助は大好きでした。