精神科の特徴と看護師の業務内容、メリット
[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more..]
精神科の特徴
精神科というと、ちょっと特殊な診療科だと思っていませんか？確かに、精神科は身体ではなく心の治療をしますので、そういう意味では特殊な診療科と言えるでしょう。
でも、精神科は身近な診療科でもあるんです。精神科で取り扱う代表的な疾患には統合失調症、うつ病、認知症がありますが、統合失調症を発症する人は100人に1人と言われています。うつ病の生涯有病率は15％（7〜8人に1人）で、65歳以上の高齢者の認知症有病率は5％前後、年間発症率は1〜2％とされています。
このような数字を見ると、精神科は一般的な内科や外科のように身近な診療科であることがわかりますよね。
精神科は、長期入院の患者さんが多いという特徴があります。2012年度の一般的な診療科は平均在院日数が17.5日ですが、精神科の平均在院日数は291.9日と一般的な診療科と精神科の入院日数には大きな差があります。精神科では、年単位で入院している患者さんも珍しくありません。
また、閉鎖病棟があることや保護者による医療保護入院、知事権限による措置入院のシステムがあることも精神科の特徴と言えるでしょう。
患者さんの年齢層も一般的な内科と比べるとかなり幅広いことも、精神科の特徴です。統合失調症は青年期に発症することが多いですし、認知症は高齢になればなるほど発症率も上がり、病状も進行します。また、最近では児童・思春期専門の精神科外来や病棟を持つ病院も増えてきています。
精神科での業務内容
精神科には、精神疾患が原因で日常生活を送ることが困難になった患者さんが入院しています。そのため、精神科の看護師の業務は、患者さんの日常生活援助（療養上の世話）が主なものになります。ほかの診療科と比べると、医師の診療の補助は少ないかもしれません。
具体的なものとしては、食事介助や清潔ケア、排泄介助、服薬管理などのセルフケアの援助です。
また、精神科特有の業務内容としては、対人関係や問題解決能力を獲得するための支援があります。精神疾患により、他人と良好な関係を築くことができなくなっていたり、何か問題が起こったとき、順序立てて解決していくことができなくなっている患者さんに対して、これらを上手にできるように看護師がうまく導きながら援助していくのです。
さらに、精神科には自殺企図や自傷行為を繰り返す患者さんや他人への暴力行為を行う患者さんもいますので、患者さんの安全を守ることも精神科看護師の重要な業務のひとつです。
精神科のメリット・デメリット
精神科で働くメリットとデメリットを考えてみましょう。
精神科のメリット
まずはメリットからです。精神科での業務はセルフケアの援助、対人関係や問題解決能力獲得の支援などですが、これらの業務を行うためには、患者さんとしっかりコミュニケーションをとり、信頼関係を築く必要があります。精神疾患を抱える患者さんと信頼関係を築くには、看護師のコミュニケーション能力による部分が非常に大きいですので、精神科で働くと、コミュニケーション能力が鍛えられます。
精神科以外でも看護師にとって、コミュニケーション能力は必要不可欠なものですので、精神科でコミュニケーション能力を鍛えれば、その後どこの診療科に行っても役立つでしょう。
また、医療行為が少なく、日常生活の援助が主な業務となるため、医師の指示の下で働くのではなく、看護師自らが考えて仕事をすることができ、看護の独自性を発揮できるというメリットもあります。
どのように看護をすれば、患者さんを良い方向に導いていけるのか、日常生活を送る上で必要な能力を獲得できるのかを考え、それを実践していくことで、大きなやりがいを感じることができるでしょう。
精神科のデメリット
次に、精神科でのデメリットについてです。精神科では、患者さんが突然興奮状態になり、自傷行為だけでなく、他者への暴力行為に及ぶことがあります。自傷行為や他者への暴力行為は、看護師が止めに入らなければなりません。また、看護師に直接暴力を振るってくることもあります。
そのため、精神科では看護師に危険が及ぶことがあるんです。このようなことがあるため、精神科では男性看護師が重宝されています。
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